【ボッチャ連載企画第2弾:後編】1グラム単位の、ボール調整。国際競技から見る「輸送」というファクター
現地での「ボールコンディショニング」
2016年リオ大会前の、コロンビア遠征。
その現地でボールを手にした時の感触が、日本のものと全く違った、と渋谷氏は言います。
ボッチャのボールは、革製。
高温多湿であったり、日本とは異なる気候にさらされれば、大気中の水分を含むなどによって、ボールのコンディションは変化してしまいます。
また、長時間でのフライトによる気圧変化もボールに変化を与え得る要素として、注意を払う必要があります。
試合に向けて選手達は、大会の規定に沿いながら、ボールの重さも、1グラム単位で調整を行っている。
たとえ日本で万全の調整をしたとしても、飛行機での移動中の気圧変化や、現地の気候によってボールの状態が変わってしまえば、現地での再調整を強いられることになります。
そうした課題を抱える中で、当初よりPROTEX製品を使用していた渋谷氏が、「このケースならばボールコンディショニングの問題は解決するのではないか」と考え、オファーを頂く形となりました。
気圧調整弁に、ボールの形に合わせてカッティングしたウレタン内装を搭載した、特注ケース。
「他のメーカーのケースでも気圧調整弁がついているものは扱われているが、緩衝材を中に入れてしまうと、実際は機能していない、という場合もあった。今回のケースは、リオデジャネイロへの輸送でも十分に機能していたと思います」
「選手からも、『渋谷さんが使っていたケースだ』と安心してもらえていた様子でした」などの話も。
リオ大会以後、海外遠征時には、PROTEXキャリーを欠かさず使用する様になります。
指先の感覚が敏感な選手は、現地でボールの状態に変化を感じた時などには、滞在先のホテルでPROTEXのケースにしばらく保管することも。
ケースの中にボールを保管しておくだけでも、ボールの状態が元に戻ってくる、とのことです。
他国の選手団では多くの場合、ボールの持ち運びにはソフトケースを使用しています。
ソフトケースの場合、空港やホテルで荷物を手渡すにも、ボールが型くずれしない様に扱われるか、かなり気を遣うことになる中、ハードケースであれば、安心して人に預けることも出来るのだそうです。
リオ大会時の内装特注仕様ケースCR-9000
改良を重ねるボールケース。新型の段積キャリーも早速、遠征に投入。
東京大会に向けて開発したアタッシュ型ボールケース
遠征先より届いた写真。スタッキング対応の新型ケースFPV-08
代表チームからフィードバックを受けながら、提供するケースも進化させています。
東京大会では、アタッシュ型の特注ケースを開発。
リオ大会のものから、内装ウレタン材のカッティング方法を変え、より試合球の型崩れを防ぐ仕様に改良しました。
スタッキング可能な長尺キャリーとして新たに開発したFPV-08も、早速、今回のモントリオール遠征に提供。
最小限な人員で遠征に行く時には、可搬性の高さがきいてくる、と渋谷氏は言います。
航空会社との交渉の結果次第では、代表チームが二つの便に分かれてしまう場合も。
今回のFPV-08も、スタッキング機能とともに、ホイールのスムーズさやハンドルの取り回しの良さから、あらゆる状況に対応がしやすいのでは、との声を頂きました。
国際競技における「輸送」という課題
「スポーツ界において、輸送というのは重要なファクターではないか」
渋谷氏はこのように語ります。
いわゆるホームアドバンテージと呼ばれる様な、開催国の「地の利」は、一定の度合いで生じるにせよ、もし器具を開催地まで輸送するハードルが高いとなれば、その「地の利」以上に、開催国、または地理的に近い国ほどアドバンテージを得やすくなることにも繋がります。
それによって、スポーツそのものの競技性が損なわれてしまうかもしれません。
「輸送」という課題は、あらぬところでスポーツの発展を止めないためにも、決して小さくない要因となっているのだと、頷かされる話でした。
その課題を解決する製品の開発とともに、少しでもボッチャスポーツ発展の一助に繋がる様、引き続きボッチャ代表チームをPROTEXはサポートして参ります。
(第3回に続く)
▼ボッチャについて、より詳しく知りたい方はこちら
ボッチャについて(日本ボッチャ協会公式サイト) >>
みんなでボッチャ1万人プロジェクト公式サイト >>
渋谷氏(株式会社スポーツセンシング スポーツアナリスト、写真右から2人目)と、ボッチャ専用ボールケース当社開発スタッフ達
▼第3弾インタビューも公開
▼第1弾インタビューはこちら